感動を受けたピアノの音

 

20年前の気付きから、私はピアノとピアニストに合わせた調律を試行錯誤し、続けていました。その調律を続けてきたことで生まれた縁が、もう一つの感動をくれた「ヴィンテージピアノ」との出会いにつながっていきました。

米子市在住のピアニストである山城裕子さんから、一緒にドイツへ行かないかと誘われたのが事の発端でした。ドイツで留学中の恩師である浮ケ谷孝夫さん(ブランデンブルグ国立管弦楽団首席客演指揮者)の楽団とピアノコンチェルトのコンサートを行うので、同行して調律してほしいとのご依頼でした。山城さんには、私が調律したコンサートホールのピアノを弾かれて以来、調律を気に入っていただき、リサイタルやご自宅の調律を担当しています。調律を任せてくださったきっかけは、ドイツ留学中に浮ケ谷さんから紹介され、たいへん気に入っていたドイツの老調律師の調律と非常に似ていたということからでした。

「本当のピアノの音との出会い」

山城さんの推薦で調律させていただいたドイツでのコンサートの後、浮ケ谷さんから、「愛知県のあるコンサートホールのピアノ選定を依頼されたので、ピアノの選定に付き合ってくれないか」と誘いがあり、向かったのがドイツのハンブルグにあるピアノショップ「KLAVIER KNAUER」でした。

そこのピアノショップで偶然見たピアノが、オーバーホールされた180cmほどの小型のベヒシュタイン(C.BECHSTEIN)でした。

少し弾いてみると、初めて聞くような深い音色と響き。「これがベヒシュタインの本当の音なんだ」と、衝撃と感動を受けました。

日本でも、ベヒシュタインのピアノの音を聞く機会は何度かありました。しかし、世界三大ピアノと言われてはいるけど…と、正直そこまでの印象は持てませんでした。
しかし、このとき初めて三大ピアノと呼ばれる理由が分かった気がしました。

その時、色々と紹介してくれたのがオーナーのジェット(Jed Knauer)。今、ドイツから優良なピアノを送ってくれるパートナーです。

この時、一度ジェットからピアノの取引の話が出ましたが、当時の私の狭い工房では受け入れが難しかったため、その時は話だけで終わりました。

「出会いから、パートナーへ」

そこから時間が過ぎ、二年前。ドイツ以来親しくさせていただいていた浮ケ谷さんから、「ジェットがピアノの取引を本気でしたいと言っているよ」と連絡がありました。
距離もあるし、言葉の壁もあるのでどうしようかと迷っていたのですが、「楽しそうだし、自分が間に入るから」と浮ケ谷さんが、私とジェットのやり取りを仲介してくださることになりました。

そして今、感動の音を響かせるピアノを、たくさんの方や新しいオーナーの方のもとへお届けできるようになりました。

感動を受けた調律からつながった、感動のピアノの音。

ここまでご協力いただいた皆様への深い感謝と共に、さらに沢山の方と、この素晴らしさを共有していけたらと思っています。